がんに負けないこころとからだをつくる
NPO法人みらい
がんがすみにくい体質をつくる
[がんに負けない食事法]
(1)がんを育てにくい食生活を実践することの大切さ
がん治療を受けている多くの方が、治療中の食生活をどのようにすれば良いのかということに関心を持っています。しかし、ほとんどの場合、主治医からは「食事は関係ないですよ。何でも好きなものを食べてよいですよ」と言われ、適切なアドバイスをもらえることはめったにありません。本当にがんと食生活は関係ないのでしょうか?…<中略>…
今まで見てきたように、がんには特有の代謝があり、食生活と密接な関係があることは明らかです。実際に、食生活とがんの危険についての膨大な疫学データもあります。自分のからだを作っているものは、日々の食事でからだに取り入れたものです。がんの予防だけでなく、がん治療においても、がんの特徴を理解し、がんを育てにくい食生活を実践することが非常に重要です。
(「がんに負けないこころとからだのつくりかた」p.46-47より引用)
(2)血糖値を急激に上昇させない食事

砂糖を含むものはもちろん、白米やパンやパスタなど、精製された吸収の良い炭水化物を摂ると、分解をあまりしなくてもよいため、ブドウ糖がどんどん血液中に吸収されて、血糖値が上がってしまいます。急激に血糖値が上昇すると、ブドウ糖を吸収する取り込み口を正常細胞より何倍も多く持っているがん細胞が、我先にと血中のブドウ糖を吸収してしまいます。吸収されたブドウ糖はがん細胞を増殖することに使われます。
また、血糖値が上昇すると、正常値に戻そうとするため体内でインスリンが分泌されます。同時に、IGF-1 (insulin like growth factor-1)が分泌されます。これも、がんの増殖を助けます。つまり、がん細胞を育てることになるのです。
がん細胞を育てないように、血糖値は急激に上昇しない方が良いのです。血糖値を急激に上げないようにするために、炭水化物は精製していない玄米や全粒粉で摂るようにしましょう。また、一日に摂る量も多すぎるとよくありません。
(「がんに負けないこころとからだのつくりかた」p.47-49より引用)
(3)塩分の摂取をできるだけ控える食事
がん細胞は取り込んだ塩分(ナトリウム)をブドウ糖から変換した酸(プロトン)と交換し、水素イオンそのものである酸(プロトン)を細胞の外に排出することによって、がん細胞周辺の微細環境を自分が活動しやすい酸性に維持しています。したがって塩分の摂取をできるだけ控えることがまず必要になります。
(「がんを生き抜く最強ごはん」p.98より引用)
野菜や魚介類にも、自然由来の塩分が少量ですが含まれます。体に必要な塩分はこれで摂取できるので、調味料や加工食品などは、基本的には必要ありません。
…<中略>…

がん細胞は取り込んだ塩分(ナトリウム)をブドウ糖から変換した酸(プロトン)と交換し、万が一、塩分を摂り過ぎてしまった場合、活躍するのがカリウムを含む食材。カリウムには、過剰な塩分(ナトリウム)を体の外に排出させる働きがあります。塩分を摂り過ぎたときはもちろん、毎日意識して食べていれば、自然と体に余分な塩分がなくなり、がんの栄養になるのを防ぐことができます。(「がんに絶対勝ちたい! 和田式食事法」より引用 p.79-81)
カリウムを多く含む野菜はアボガド、昆布、ひじき、バナナ、サトイモ、ほうれん草、納豆、サツマイモ等々。(「がんに負けないこころとからだのつくりかた」p.59-60より引用)

(4)mTROを活発にしない食事
mTORを活発にしてしまう物質があります。それはインスリンとIGF-1というホルモン様物質です。(「がんに負けないこころとからだのつくりかた」p.29-30より引用)
インスリンは、血糖値を下げるために、膵臓から分泌されるホルモン。甘いものや、カロリーの高いものを食べ過ぎて血糖値が上がると、その分たくさんのインスリンが分泌されます。するとmTORがとても元気になり、その分がんも成長。糖分はここでも、がんの成長を助ける働きをしてしまうのです。
(「がんに絶対勝ちたい!和田式食事法」 p.24-25より引用)
IGF-1は主に肝臓でつくられる、インスリンのような働きをする物質。細胞の成長にも関わっていて、体内に過剰にあるとmTORが活発になり、こちらもまたがんを成長させてしまいます。このIGF-1は乳製品にも含まれていて、食べ過ぎると、余分なIGF-1を増やす原因になります。
(「がんに絶対勝ちたい!和田式食事法」 p.25より引用)
(5)体の中の炎症を抑える
①タンパク質は植物性や魚介類で摂る食べることで体の中に炎症を起こしてしまう食材もあります。代表的なのが、牛肉・豚肉・羊肉などの赤身肉と加工肉で脂肪に含まれる飽和脂肪酸は、加熱することで、炎症の原因となる活性酸素が発生します。加熱しなければいい、というわけでもありません。これらの肉類には、乳製品と同じように、がんの増殖に関与するIGF-1も含まれます。…<中略>…

タンパク質の補給なら、大豆などの植物性タンパク質や、魚介類のタンパク質で十分。例えば青魚には、炎症を鎮める作用のあるDHAやEPAが豊富に含まれるなど、がんがすみにくい体をつくるための栄養がいっぱい。肉類や乳製品よりも利点が多いのです。
(「がんに絶対勝ちたい!和田式食事法」 p.83-85より引用)

②炎症を加速させる油と、炎症を抑える油
油(脂肪)には、炎症を加速させる油と、炎症を抑える油があります。前者の代表がトランス
脂肪酸と肉類に含まれる飽和脂肪酸です。トランス脂肪酸は、炎症を抑える働きを邪魔して、炎症反応を高める作用があります。マーガリン、ショートニングを使ったお菓子類、業務用の揚げ油に含まれるほか、飽和脂肪酸が含まれる赤身肉や加工肉を加熱することでも生まれます。これらの油は体に炎症を起こすだけでなく、動脈硬化の原因にもなります。
(「がんに絶対勝ちたい!和田式食事法」p.86-87より引用)
反対に炎症を抑える油が、オメガ3系の不飽和脂肪酸。αリノレン酸、青魚に多いDHAやEPAがこれにあたります。また、炎症を抑えるだけでなく、がんの増殖に適した環境を変え、転移するのを防ぐ効果がある、ともいわれています。さらに、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化、心筋梗塞、高血圧、脂肪肝、高脂血症、メタボリックシンドロームなどを予防し、細胞のがん化を予防する働きも。前者の油とは、同じ油とは思えないほど優秀なのです。
特にαリノレン酸は、体の中で生成できない、必須脂肪酸。外から摂取する必要があり、亜麻仁油やえごま油がその代表選手です。…<中略>…
ただし、加熱するとせっかくのαリノレン酸に反応が起こり、酸化されてしまう原因にもなるので、生で食べるのがおすすめです。加熱
調理をする場合は、同じ不飽和脂肪酸で酸化しにくい、オメガ9系のオリーブオイルや椿オイルを使うとよいでしょう。
(「がんに絶対勝ちたい!和田式食事法」 p.87-89より引用)
(6)免疫力を高める食事
①野菜、果物の抗酸化力を生かす
免疫細胞にとって大敵なのが、日々、体の中で発生している活性酸素。きちんと取り除いてあげないと、免疫細胞が働けないばかりか、細胞を傷つけてがん化の原因になったり、がんが大好きな酸性の環境をつくったりと、いいことなしです。その活性酸素を取り除くのが、野菜やフルーツに含まれる抗酸化成分。…<中略>…。
抗酸化成分を代表するのが、ビタミンA,C,Eや、ポリフェノールなどの鮮やかな色素に含まれる成分のファイトケミカルです。(「がんに絶対勝ちたい!和田式食事法」 p.90-91より引用)


②植物性食品で体内をアルカリ性傾向にする。免疫細胞が好きな環境が、アルカリ性。酸性を好むがんとは正反対です。つまり免疫細胞が働きやすいアルカリ性の環境だと、がんは元気がなくなり、さらに元気になった免疫細胞によってがんがたたかれ、どんどん弱っていくという構図です。(「がんに絶対勝ちたい!和田式食事法」p.96より引用)
がん細胞をおとなしくするためには、体内を酸性化する動物性食品を避け、アルカリ傾向に改善し維持できるように植物性食品をたくさん摂りましょう。(「がんに負けないこころとからだのつくりかた」p.56より引用)
③きのこの免疫賦活作用を利用する
きのこに含まれるβグルカンには、疫細胞に刺激を与えて免疫力をアップさせる、免疫賦活作用があるとわかっています。特に多く含まれているのが、ハナビラタケですが、種類を問わず、野菜やフルーツと同じように、きのこは毎日の食生活に積極的にとり入れてほしい食材です。
(「がんに絶対勝ちたい!和田式食事法」p.97より引用)

[食事のポイントまとめ]
1.炭水化物は精製していないもので控えめに摂る。
[がんは糖分で生きている]
2.塩分を控える。[がんは塩分を好む]
3.たんぱく質は植物性のものや魚で摂る。
4.野菜・果物・きのこをたくさん摂る。[からだの免疫を高める]
5.脂質はからだによい油を選んで摂る。[がんの炎症を抑える]
6.乳製品を摂らない。[がんを育てない]
7.牛肉・豚肉・加工肉・硬化植物油・人工油を摂らない。
[がんによい環境を作らない]
「がんに負けないこころとからだのつくりかた」 p.61より引用